いつまでも自分の足で歩くんだという母の思いとけん玉の話

70代の母から電話があった。「どこかに、けん玉が売っていたら買っておいて」との事。「100円ショップにあるんじゃないの?」と言うと「無かった」との返事。

そもそも何故けん玉が必要なのか?と聞くと「けん玉は中腰の姿勢でやるものなので、脚に筋肉がつくからやってみようと思う」と言う。

私は「何だそれ」と思って笑ってしまったが、母が急にそんなことを思いつくわけがないので、おそらくテレビでそういう情報を得たのだろうと思った。

一体何の番組を見たのか?ためしてガッテンかしら?と思い検索してみると、1ヶ月ほど前のためしてガッテンで、けん玉やお手玉などの昔遊びが脳を活性化させ、認知症を予防するという内容を放送していたようだった。

母はテレビが大好きで1日にいくつもの番組を録画しては、それを毎日見て楽しんでいるので、おそらくためしてガッテンも先月のものを最近見たのだろう。

さらにネットで「けん玉 足腰」と検索してみると、ダイエットやら健康やらという言葉が出てくる。実際にけん玉をする事がどのくらい脚に良いのかは分からないけれど、まあ70代の母がやる気になっているのは良い事なので、早速ネット通販でけん玉を購入して年末に持って行こうと思う。

私と同じで、きっとすぐに飽きるだろうけど。

うちの母は元々ものすごい運動嫌いで昔からぽっちゃり体型なのだけれど、ここ数年は歩数計を持ち歩き、一生懸命ウォーキング(散歩)をしている。

以前、両親が住んでいるアパートの玄関前に小石が20個ほど置いてあったので「これ何?」と聞くと、ウォーキングの際に遠くまで歩きに出てしまうと帰ってくるのが面倒になってしまうので、近所をグルグルと周っているらしく、1周するごとに小石を置いて何周歩いたかが分かるようにしているとの事だった。

根っからの運動嫌いが70代になって体を動かすようになったのは、おそらくいつまでも自分の足で歩く為だと思う。要するに、離れて暮らす私や姉に介護をさせないようにと頑張っているのだろう。

運動だけではなく頭も使うようにと最近は、"間違い探し"などの雑誌を買ったりもしているし、食事の塩分なども気を使っているようで、濃い味好きだった母の料理は随分と味付けが薄くなった。

母がここまで「ボケないように、いつまでも健康で歩けるように」と意識するようになったのは、私達がこうして離れて暮らしているおかげだと思う。「子供に頼らず最後まで自立して生活していかなければ」という意識が母の行動を変えたのだ。

もし私と一緒に生活をしていたら、暮らしにもう少し甘えがあったかもしれない。「ヅラ美はまだ若いから」と食事の味付けを濃くして、本人もそれを食べていただろうし、ウォーキングだってそこまで一生懸命にはならなかったかもしれない。

私は、離れて暮らす歳老いた両親の事がいつも心配で不安で「一緒に暮らして、生活を支えた方がいいのだろうか」とよく考えるけれど、けれど頑張って体に気を使っている母を見ていると「これでいいのかもしれない」とも思えてくる。

母が「頼れるのは自分の足腰だけ」と思う事が健康に繋がるのであれば、こうしてお互いが自立して離れて暮らす事にも意味があるのかもしれないな、と。そんな風に思う。